TIST132
8/28

8 卒業される287名の皆さん、おめでとうございます。晴れてこの日を迎えられたことに、筑波研究学園専門学校の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。 また、ここに至るまでの長い間、皆さんを支えてこられたご家族やご関係の方々のご支援に対して、深い感謝の意をお伝えしたいと思います。 本来であれば、皆さんやご家族の方々とともに、卒業式を挙行できることを楽しみにしておりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、そして皆さんの健康と安全のために、第33回卒業式は学科別の分散・オンライン型にて執り行うこととなりました。形は変わりますが、様々な場所で見守ってくださっている方々とも心を合わせ、皆さんの卒業をお祝いしたいと思います。 新型コロナウイルス感染症は、またたく間に世界全体に広がり、経済や社会に大きな影響を与えています。その克服はいまだ途上にあり、収束に向けた様々な努力が、日々続いています。この感染症の拡散を目の当たりにして、現代の人々の活動や経済社会の仕組みが、いかに国境を越えたものとなっているのかを、皆さんも実感したのではないでしょうか。毎日、世界各国からのニュースで、感染拡大やワクチンの開発、接種状況等、共通の話題が報じられ、世界中の人々が感染症の収束を願っている様子が手に取るように分かります。 今回の感染症拡大のように、世界では時として思わぬ困難な状況に陥ることがあります。人類の歴史を振り返っても、疫病や災害、戦争や紛争などが繰り返され、人々は限界に直面し、時には誤った判断を下しながらも、次には同じ過ちを繰り返さぬよう、長い年月をかけて、将来を見通す力をつけ進歩してきました。そして現在、人間社会は未曾有のコロナ禍にあり、残念ながら、未だ、将来を見通すことができない状況にあります。 そのようななか、世界中で「ニューノーマル」という考え方が前向きに動き出しています。日本においては、「新しい生活様式」として呼ばれておりますが、将来を見通すことができない現在、従来の常識にとらわれずに「新たな日常」を創り上げていくことこそが、今の私たちに求められていることだと言えるかもしれません。そして、これは日常ばかりでなく、経済活動や教育など社会全般に及びます。 学生最後の一年をコロナ禍の中で過ごした経験は、「できないことが多かった一年」なのではなく、周りの人に思いを寄せて互いに健康を気遣い合い、オンライン授業やハイブリッド授業で仲間や先生とふれ合い、「誰もが経験したことのない新しい学習様式で学ぶことのできた一年」と捉えることもできるのです。 こうした発想の転換がニューノーマルの考え方の原点なのです。 そして、このような時代こそ、皆さんが活躍するときです。皆さんは、TISTで専門分野を深く学ぶことを通じて、互いに学び合い、誤りを正し、協力によってさらによりよいものを作り上げていく経験をされたことと思います。本学で学ぶことによって培われた皆さんのそれぞれの能力は、社会に出てから様々な場で他者と共に働くときにも必ず活かされると思います。  いま必要なのは、望ましい未来社会の在り方を構想し、そこに至る道筋を設計することです。そのときには、社会とは何か、自由とは何か、ひとの幸せとは何か、といった根源的な問いにまで遡る必要があります。 本日、卒業する皆さんに、まず、これからの人生に幸多かれと心からお祈りいたします。それぞれの進む道で、ニューノーマルの考え方で、自ら豊かな人生設計をされ、その実現に向けて邁進されることを願っています。  今後しばらくは、世界の混乱は続くと思われますが、その先の光を求めて共に歩んでいきましょう。  社会という大海原に向かって漕ぎ出していく皆さん、順風満帆の時も、嵐の時も、磨かれた己の知と感性を駆使し、懼れることなく道を切り開いていってください。 そのエールを送り、私からの餞の言葉とさせていただきます。TIST卒業生へ筑波研究学園専門学校 学校長 野口孝之

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る