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6専門学校の誕生 去る5月1日に新天皇陛下が即位されて、30年続いた元号「平成」の時代が終わり「令和」の時代がスタートした。現在の専門学校制度が発足したのは、「平成」の前の元号「昭和」の時代、昭和51年(1976年)である。 当時は高度経済成長期と呼ばれていて、多くの産業分野で設備の近代化が進展するとともに、コンピューターの普及によってわが国の産業・社会構造が大きく変わりつつあった時期であり、新しい技術、資格を持つ人材需要が大きくなっていった時代でもあった。 さまざまな職業資格の取得を目指す若者が各種学校に集中し、職業訓練、技能訓練について制度化する必要性が生まれて、「高等学校卒業者に準じる学力があると認められる者」のための教育制度として、「専修学校の専門課程」すなわち専門学校が誕生した。専門学校の発展とTISTの創設 その後、第2次ベビーブーム世代と高等学校卒業者の教育需要に支えられて、専門学校への入学者は増え続けて行き、専門学校は大学や短期大学のカウンターパートとしての社会的地位を確立していった。本校TISTが創設されたのは、制度の発足から10年を経て専門学校が教育機関として広く認知されるようになった昭和62年(1987年)のことである。 TISTが最初の卒業生を実社会に送り出したのが平成元年(1989年)だから、TISTは文字通り平成の時代と共に歩んできた。TISTのこれまでの歴史を振り返ると、平成の時代に起きた情報化社会の進展、バブル経済の発生と崩壊、少子高齢化など、さまざまな社会の変化に柔軟に対応して、職業教育を行う高等教育機関としての役割を果たし、地域社会の信頼を得てきたといえる。「平成」から「令和」の時代へ 平成18年(2006年)、教育基本法が60年ぶりに改正され、「職業及び生活との関連重視」が教育目標の一つとなった。また、文部科学省は令和2年から、「生きる力を育てる」新しい学習指導要領を小、中、高等学校で順次スタートさせる。 そうした中で、平成26年(2014年)に「職業実践専門課程」の制度が専門学校に導入され、職業教育にガイドラインを設けて教育水準の維持・向上が図られることになった。さらに、平成29年(2017年)には「専門職大学」が創設されて、一定の基準を満たす専門学校が大学に移行することも可能となった。 現在、全国に約3000校ある専門学校のうち職業実践専門課程の認定学科を有するものはその約3分の1、専門職大学はさらにその50分の1以下である。職業実践専門課程の認定基準やほぼ大学並みといわれる専門職大学の設置基準が、多くの専門学校にとって高いハードルとなっているからであろう。専門職大学への課題 職業実践専門課程制度は、TISTが設立趣旨として掲げた「産学協同」による実学重視の職業教育そのものであり、TISTの全ての学科はこの制度発足と同時に認定された。TISTでは、各学科で教科目の適正化、企業との連携教育の単位認定や教育活動の点検・評価、教員研修の充実などが図られていて、認定から5年を経て、TISTの職業教育はこの制度が本来めざしている軌道に近づいてきた。 一方、TISTが専門職大学へ移行するには少し時間が必要だ。 TISTは、もともと工業系の大学を目指した高等教育機関設立の構想から出発したこともあって、学校敷地や校舎、講堂などは現状に大幅な変更を加えることなく、専門職大学の設置基準に適合するかもしれないが、そのほかの施設・設備の整備、教員の研究環境整備、有資格教員の育成と補充、教育課程の高度化など、専門職大学への移行に向けて越えなければならないハードルは少なくない。 「社会の変化を適確に捉え、人材需要と教育ニーズに応えて教育課程を柔軟に編成し、人材を育成して実社会へ送り出す」という、専門学校の基本的役割を果たしながら教育機関としてステップアップ出来るか。 「令和」の時代は、TISTだけではなく専門職大学の設置を目指す全ての専門学校にとって、その真価が問われる時代でもある。専門学校の真価が問われる「令和」の時代筑波研究学園専門学校 学校長 柿崎明人

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