TIST126
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4特集集意欲・能力・適性等を多面的・総合的に評価する。○学位   専門職大学を卒業した者に対し「学士(専門職)」の学位を、専門職短期大学を卒業した者に対し「短期大学士(専門職)」の学位を授与する。また、専門職大学の前期課程を修了した者に対し「短期大学士(専門職)」の学位を授与する。○修業年限の通算   社会人の学び直しを推進するため、実務の経験を有する者が専門職大学等に入学する場合に、当該入学者の実務経験を通じた能力習得を勘案して、一定期間を修業年限に通算できる。○認証評価   専門職大学等の認証評価は専門分野の特性に応じたいわゆる分野別評価を行う。 ……………………………………4.「職業実践専門課程」と 「専門職大学等」との関係 「専門技能と教養の両方を育み、現場で中核を担う人材の養成」を目的とした「専門職大学等」の新たな大学創設は、短期大学制度化(1964年)以来、55年ぶりの大学改革である。特に、実践的な職業教育に特化した新大学の創設は、‚学術研究を重んじ職業教育を下に見る‘といったこれまでの大学の位置づけを変える突破口となり得ることから、今後に期待されるところである。 さて、専門学校については2014年4月に「職業実践専門課程」が創設されているが、新大学はどのような位置づけとして考えられてきたのだろうか。文部科学省は、2011年1月の中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の答申において、高等教育レベルでの新たな「職業実践的な教育に特化した枠組み」の構想を示した。その後、調査・検討を重ねた結果、〝先導的な試行としての「職業実践専門課程」を認定する仕組みづくりを行う必要性がある〞と結論づけ、同課程を創設した。 これらの経緯より、専門学校関係者は同課程を「新たな学校種の制度を創設する方策」への第一歩として位置づけ、それは新大学を視座に入れたものであった。当時、同課程の認定を受けた学校は、教育水準や教育活動、運営体制等が国から認められ、将来的に新大学が制度化されたときには、認定された学校から新大学に昇格すると考えていた。しかし、実際には、認定を受けている学校の教育水準や教育活動、運営体制等に差が見られ、認定が必ずしも「教育の質」保証になっていないこと、認定が新大学昇格への条件ではないこと、新大学は既存の大学を含めて独自に認可される結果となったことなど、専門学校関係者にとってはトーンダウンになる結果となった。 ……………………………………職業実践専門課程の概要  「職業実践専門課程」は、業界や企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組み、職業教育の水準の維持向上を図ることを目的としている。平成30年度には、全国の専門学校2,822校のうち954校(33・8%)、2,885学科(38・9%)が認定を受けている。 ……………………………………5.職業教育の質の向上に向けて 産学協同により誕生したTISTは、2014年度創設の職業実践専門課程に全学科が認定を受け、それぞれの専門分野において実践的な職業教育の調査・研究を行い、教育活動に反映させている。 「職業実践専門課程」の認定を受け5年目となるTISTでは、職業教育の新たなステップとして、「専門職大学等」の設置基準を意識した運営体制を強化していくこととする。① 実践的な職業教育を踏まえた教育目標、教育課程の編成 各学科の基本設計は業界や企業等の動向・ニーズを踏まえ、その上で育成人材像・教育目標を設定することを徹底する。学科の教育目標は、関連する専門領域の職業人育成が大前提であり、その過程において全員合格を目指す資格取得指導は当然のことである。教育課程編成委員会での議論についても資格取得から人材育成に向けた教育課程の検討に重みを置く。② 企業内実習(臨地実務実習) の重視 現在、TISTで実施している「企業等との連携授業」は、「学内授業(特別講師による演習・実習授業)」、「学外授業(インターンシップ、臨地実習)」がある。「学内授業」「学外授業」とも全ての学科において実施しているが、「学外授業」は学科により実施形態が大きく異なっている。特に、今後の「学外授業」は、企業と学校とが教育連携のもとでカリキュラムを構築する「臨地実習」を全学科で定着させていくことが重要である。これらは「こども未来学科」「医療情報学科」においての実績を参考に学内で規程化を進めていく。③教員資質の向上 教員には、専門分野の動向やニーズを理解し、自ら先端的な知識や技能の習得に努め、それを学生に教授する能力が求められる。これまで専門学校においては、職業経験のある実務家教員が大半を占める傾向にあるものの、教員としての能力開発・自己研鑽をどのように進めていくのかが大きな課題であった。今回の新大学では、実務家教員を「概ね5年以上の実務の経験を有し、高度の実務の能力を有する者」と定義し、さらに研究能力を併せ有する実務家教員は、実務上の実践知識を形式知化、あるいは構造化・理論化し、様々な形で発表した業績等が求められるとしている。ここまでの能力開発は難しいものの、職業教育にあたる教員として、自ら業界や企業等と積極的に関わる機会をもち、さらに職業教育を充実させていくことが教員の資質及びTISTの教育の質の向上に結びつくことは言うまでもない。  「職業実践専門課程」は、「専門職大学等」とは学校種、設置基準面で大きく異なるものの、「実践的な職業教育」、「企業内実習(臨地実務実習)の重視」、「教員資質の向上」という点では目指す方向性は一致している。これからのTISTは同課程が目指す職業教育の一層の充実により新大学を視座に入れた「教育の質」の向上を図っていくことが重要であり、喫緊の課題である。

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