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3特集集専門職大学の創設とTISTにおける 職業教育の質の向上に向けて学校法人筑波研究学園 法人企画部長       筑波研究学園専門学校 教務部長 野口孝之1. 新たな高等教育機関の創設 2019年度、新たな高等教育機関として、専門職大学、専門職短期大学、専門職学科(以下、「専門職大学等」)が創設される。今日の産業界では、変化の激しい社会に対応できる人材として、高度な「実践力」と新たなモノやサービスを創出できる「創造力」を有する人材確保が急務となっている。このような背景より「専門職大学等」は実践的な職業教育に重点を置き、産業界との密接な連携により専門職業人材の育成強化を図ることを目的としている。 創設年度の申請は17校で、うち10月の答申で大学1校が認可され、大学1校、短期大学1校が審査継続(保留)となった。11月には保留であった2校を含め、最終的には3校(大学2校、短期大学1校)が開設認可を受けた。今回の審査結果について、大学設置・学校法人審議会(以下、設置審)では、「総じて準備不足で法人として大学設置に取り組む体制が不十分」と異例のコメントを発表している。なお、申請した17校のうち14校は設置認可を受ける見通しが立たず審査段階で申請を取り下げ、うち数校は開設年度を2020年度に変更し再申請への手続きを進めている。2. 認定審査による 評価と指摘事項 設置審では、今回の認定審査について、審査対象の多くの学校で「専門職大学の特色である実習内容、評価基準、実施体制が十分検討されていない」、「優れた実務上の業績がない者が実務家の教授等として申請されている」、「実践的かつ創造的な専門職業人材の専門性の支えとなるべき理論の教育が不足している」など大学教育としての内容・体系性が不十分であるとしている。また、「教育課程連携協議会の構成員が不適切」、「‚実践の理論‘を重視した研究を行う施設・設備が整備されていない」など、教育課程や教員組織、施設・設備等の面で、専門職大学制度の特色を活用し社会的使命を十分に果たす適切な設置計画と認められないものが多かったと評している。 なお、申請そのものについて、「実習の必要単位数や実務家教員について、設置基準に定める要件を明らかに欠いている」、「申請に必要な書類が十分作成されていない」、「審査意見に対して適切に対応がなされない」など、審査自体に支障をきたす状況であったとしている。3.新大学設置に向けた課題 設置審では特に重視すべき事項として、「育成人材像が専門分野のニーズを踏まえているか」、「体系的な教育課程の編成であるか」、「実務家教員が積極的に任用されているか」、「企業内実習(臨地実務実習)を含めた実習が強化されているか」、「産業界と連携した教育課程の開発等がなされているか」等をあげている。 実務家教員の教員要件には、「5年以上の実務経験」、「高度な実務能力」の2点があり、配置する実務家教員の半数以上は、‚研究分野での実績・能力を併せもつ人‘としている。また、配置する大学教員のうち4割以上を占めなくてはならないとしている。さらに、設置基準には記載されていないが、実務家教員の配置(教員審査)には、既存大学の実務家教員がもつ実績や業績、活動等を十分理解し、大学教員として必要とされる要件を理解していることが求められる。 次に「企業内実習(臨地実務実習)」には、卒業単位のおおむね3〜4割程度以上を実習等の科目と位置づけ、適切な指導体制が確保された企業内実習等を2年間で10単位以上、4年間で20単位以上履修すること(専門職短大では300〜450時間、専門職大学では600〜900時間の実習時間の履修)が必要とされている。新大学で行う実習とは、いわゆるインターンシップとは大きく異なり、大学側と受入企業側との間で高度な実務実習ができるよう教育課程の編成が求められるほか、複数の施設に分かれて実習を行う場合でもそのすべてで一定の水準を確保するよう「実習の内容、評価基準、実施体制」を定めなくてはならない。 ……………………………………専門職大学等の特色(設置基準の概要)○教育内容   専門職大学等は、その専門性が求められる職業に就いている者、当該職業に関連する事業を行う者その他の関係者の協力を得て、教育課程を編成、実施することになっており、産業界等と連携した教育を実施することが義務付けられている。   また、卒業単位のおおむね3〜4割程度以上を実習等の科目とするとともに、適切な指導体制が確保された企業内実習等を、2年間で10単位以上、4年間で20単位以上履修することとしている。○修業年限   4年制課程の専門職大学、2年制又は3年制課程の専門職短期大学がある。   専門職大学は前期課程及び後期課程の区分制課程も導入できることが可能で、これにより、前期課程修了後一旦就職してから後期課程へ再入学する、社会人が学び直しのために後期課程から入学するなど、多様な学習スタイルが選択できる。○教員   実務家教員を教員組織の中に積極的に位置づけ、必要専任教員数のおおむね4割以上を実務家教員とし、その半数以上は研究能力を併せ有する実務家教員とする。○入学者の受入れ   高等学校(専門学科・普通科)卒業後の学生、社会人学生、編入学生など、多様な学生を積極的に受入れる。入学者選抜では実務経験や保有資格、技能検定での成績等を積極的に考慮し、

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