TIST116
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5医療機関の現状  〜医療のICT化と 病院事務の多様化〜 近年、医療機関では、医事コンピュータ、電子カルテの導入、診療情報のデータベース化など、ICT化が急速に進んでいます。これらのICT化により、医療現場においては医療の質の向上と患者様の待ち時間軽減などが期待される一方で、ICT化に対応できる人材が不足しているという現状です。 また、病院内での事務業務は多様化しており、事務従事者は様々な立場で病院運営に携わっています。受付窓口、電話応対等の秘書業務、保険請求業務に携わる「医療事務」はもとより、病名や治療行為などの広範囲の医学知識を有し診療情報を専門的に扱う「診療情報管理士」の育成は国内ばかりでなく海外でも重視されています。さらに、平成20年度からは、医師の業務負担軽減を目的として厚生労働省が新たな職種「医師事務作業補助者」を発表し、電子カルテの代行入力、診断書・処方箋などの文書作成を医師の指示の下で行う人材の育成が急務とされています。医療機関で求められる人材と 教育内容 このように専門化していく病院事務ですが、これらの職種すべてに共通する人材像は、ICT化に対応できる人材でなければならないことです。実際の病院や診療所、クリニックにおいては、手書きレセプトではなく、医事コンピュータで保険請求事務が行われています。また、新たな職種である医師事務作業補助者についても、医師が行う事務作業の代行業務をほとんどがコンピュータで的確に行わなければなりません。更に電子カルテシステムは医師の診療と平行して行われることが一般的なため、就職活動前までにはその基本操作や概念を学んでおくことは重要といえます。 しかし、これまで(現在でも多くの学校がそうですが)、TIST以外の医療事務系の専門学校は、〝手書きレセプト作成を学び資格を取得する〞ということが学習の中心でした。そのため、実際の医療機関に勤務してから、医事コンピュータや電子カルテ等の操作技術を学ばなければならない状況になっているのが現状です。TIST医療情報学科が行う 医療のICT教育 産学協同の趣旨で設立されたTISTでは、このような医療機関からの育成人材像を受け、今から21年前の医療情報学科設立時よりICT教育と医事コンピュータ技能に関する授業を導入してきました。設立当時は医事コンピュータを導入していない医療機関も若干ながらまだ存在する時代でしたので、当学科の卒業生が医事コンピュータ技能に加えワープロや表計算などの操作技術を持った人材ということで評価されました。 また、平成14年の国の方針「保健医療福祉分野の情報化に向けたグランドデザイン(厚生労働省)」に基づき、医療機関では電子カルテシステムやレセプト電算処理システム等のシステム導入が進められるようになりました。同時に本校においても医療機関の動向を見据え、電子カルテシステムの授業を導入し現在に至っています。電子カルテへ診療情報の入力医事コンピュータで保険請求医療情報学科医療情報学科は、病院や診療所、保険調剤薬局等の医療機関と連携し実践的教育に取り組んでいます。医療機関の事務業務は一般企業とは大きく異なり、保険請求事務のしくみや病院組織や医学などの専門知識が求められます。また、病院事務には様々な職種があり、それぞれに専門性が異なってきます。当学科では、これらの専門性に対応するため、「診療情報管理」「医療情報」「医療福祉」の3コースを開設しています。なお、平成29年度からは、医師事務作業補助者育成を目的とした「医療秘書」コースの新設を予定しています。多様化する病院事務として 活躍できる人材の育成、 実習から就職へ学科長 横瀬和子

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