TIST108
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3新年度スタート特集年度スタート特集「新しい専門学校」を迎える 時代の背景 現在の専門学校制度が発足したのは、昭和51年(1976年)のことである。それから48年を経て、平成26年4月(2014年)から、「職業実践専門課程」という新たな制度が発足することとなった。これは、わが国の高等教育制度の上で画期的なものであり、各方面から強い関心が寄せられている。 専門学校の制度が昭和51年に誕生した背景には、高度経済成長下での「技術革新」への対応という課題があった。それより14年前には、中堅技術者養成を目的とする「高等専門学校」という制度が誕生した。この学校の修業年限は「中学校卒業後5年間」というもので、短期大学相当の教育機関であったが、卒業後の進学先は閉ざされていた。しかし、発足後10年程した段階で、「大学3年次」への編入が認められるようになる。その結果、高等専門学校に対する評価が関係者間で高まり、現在に至っている。 一方、昭和40年代後半に入るとコンピュータの発達と普及により産業構造が大きく変化することとなる。これには実践的教育が必要とされ、大学や短期大学そして高等専門学校では対応が不十分であった。その結果、それまでの「各種学校」を発展させた型の新しい教育制度としての「専門学校」が発足したのである。昭和51年のことである。この当時は、第2次ベビーブームの波の中にあり、4年制大学への入学希望者は年毎に増加し、大学の総定員を大きく上廻る状況であった。そうした事情も加わり、専門学校への入学者は着実に増え続けた。 そして、10年後の昭和60年代に入ると、大学や短期大学と並ぶ高等教育機関として広く認知されるようになった。TISTが設立されたのは、昭和62年のことで、丁度この期待と一致している。その後、情報化社会の進展とバブル経済の発生に伴い、「高度な実践的技術者」への要望が極端に高まりを見せることとなる。しかし、平成の10年代に入ると18歳人口の減少に伴う「大学全入の時代」となり、加えて「バブル経済の崩壊による平成不況」の時代に突入する。そうした状況の中で、「大学や短期大学に進学するよりは、専門学校の方が実践的な力が身につき、就職にも有利である」という言葉が聞かれるようになるのである。文部科学大臣認定の「職業実践専門課程」が誕生 専門学校制度が発足してから半世紀に近い歳月を経て、平成26年4月より新しい教育制度の前提とも言われる文部科学大臣認定の「職業実践専門課程」が誕生することとなる。ここに至たるまで経過を〝時系列〞に追ってみると、まず教育の憲法といわれる「教育基本法」が平成18年に60年振りに改正され、教育目標のひとつに「職業及び生活との関連重視」が盛り込まれた。さらに平成20年には、文部科学大臣が『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』を中央教育審議会に諮問し、平成23年の答申には「職業実践的な教育に特化した枠組みについて」が明記された。具体的には「新たな学校種の制度を創設するという方策と共に、既存の高等教育機関において新たな枠組みの趣旨を生かしていく方策も検討することが望まれる」という両論併記が盛り込まれた。これを受けて平成24年、文部科学省に「専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議」が設置され、平成25年7月の会議で職業実践専門課程の創設が提案された。 そして、文部科学省は平成25年8月30日、専修学校の専門課程における職業実践課程の認定に関する規程を官報で告示、同日より公布施行された。これによると、一定の要件を満たした専修学校の専門課程を「職業実践専門課程(学科)」として文部科学大臣が認定し奨励することにより、専門課程における職業教育の水準の維持・向上を図ることが狙いとされている。具体的な認定要件としては「新しい専門学校」の       時代を迎えて  ―TISTとしての取り組み―学校法人筑波研究学園 理事長 西谷隆義

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