TIST119
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4卒業特集業特集手段としてというよりはむしろ、インターネットに接続して必要な情報を得たり、画像を含むさまざまな情報を発信するための道具として利用されています。さらに、スマートフォンから発信されるパーソナルデータがインターネットに蓄積され、そのビッグデータを解析した結果がさまざまな用途に利用されています。 近い将来、人工知能(AI)を使ってビッグデータを解析し、災害予防や医療診断、新薬開発などの分野に応用することによって、私たちの生活環境はさらに豊かになると期待されています。一方、情報化社会とグローバリゼーションの進展は、サイバー犯罪の増加や犯罪の多国籍化につながって、従来の犯罪捜査の考え方ではない新しい対応が求められるケースが増えています。 私たちが何気なく書き込むLINEやSNSについても同様です。便利なコミュニケーションの手段でも、使い方にはある一定の配慮が要ります。互いに電話で話していた時のように、相手の声の調子や言葉遣いから受話器の向こう側を想像することはできません。メッセージや画像を書き込む際には、受け取る相手が生身の人間であることを忘れず、メッセージが拡散する周囲のことも十分考えなければなりません。不要な誤解を招かないためには、これまで以上に周りを気にしてコミュニケーションすることが求められているのです。情報化社会の進展が私たちの生活や考え方を少しずつ変えつつあるのかもしれません。 科学技術の進歩によってもたらされるのは生活の豊かさだけではありません。いわゆる発展途上国では、急速に進む産業の近代化に汚染対策などが追いつかず、汚染物質が周辺諸地域に拡散して深刻な問題となっているケースが少なくありません。わが国では40年以上前の出来事であった工場排水の浄化や大気汚染などの環境問題が、いま各地で繰り返されています。20世紀に克服したはずの問題が、再び世界のどこかで繰り返される現実を知るたびに暗い気持ちになるのは私だけではありません。人種や宗教、地形などによって区割りされた国境を基本とし、世界共通の価値基準を目指してグローバル化を推し進めてきた20世紀の考え方が立ち行かなくなっているのかもしれません。5.21世紀を生きる 前項で述べたような大きな転換期にある世界に皆さんは歩みだしていきます。皆さんはさまざまな価値観が変わりつつある実社会で、たくましく生きていくことを求められているのだと思ってください。 以前皆さんにお話ししたことがあると思いますが、インターネットの普及したネット社会では生身の人間が欠落した仮想空間を作り出し、それによって私たちが本来持つべき豊かな人間性が失われていく恐れがあります。今日のような情報化社会でこそ人と人とのコミュニケーションが大切です。それを実現するためには、匿名性に身を隠すことができるコミュニケーションの手段ではなく、人間同士が向き合って話し理解し合うことが重要です。人と人とが直接言葉を交わすことによって初めて、自分とは違う意見を持つ人を理解し、異なる立場の人の存在を容認することが可能です。これらから実社会で活躍する若い皆さんには、周囲の人々と一緒になって物事を考えていく力がこれまで以上に求められているといって間違いありません。 社会人として大切なことの一つは、自分の足で立って現実を直視し、自分の頭で考え周囲の人と一緒になって行動できる人間であるということです。自分を律することができる人間であるといってもいいでしょう。情報の真偽を問うことなく無批判に受け入れることは、成熟した社会人のすることではありません。情報を鵜呑みにすることによって私たちの生活が脅かされることすらあります。最近話題になっている「偽ニュース」だけではありません。新聞やテレビで報道されるニュースなどのさまざまな情報も無批判に受け入れるのではなく、皆さん自身の頭でもう一度考え、責任ある行動のできる社会人になって欲しいと思うのです。6.健康で実り多い人生を願う 皆さんは、本校TISTでそれぞれの職業分野で働くために十分な基礎的な能力を習得し、必要な資格・免許を取得して、これから実社会に出ていきます。先ほど述べたように、皆さんを迎える社会は動き続けています。21世紀という新しい時代にふさわしい考え方や社会秩序が生まれようとしています。そうした社会の中で主体性を失わずに生きて欲しい。これから日本の社会を担っていく皆さんには、自分自身を真直ぐ見つめ、自分の頭で考えて行動していく自立した人間として成長していってほしいと思うのです。職場や地域社会あるいは家庭の中で起きるさまざまな事柄に対して、周囲の人々と一緒になって積極的に取り組み、社会人として成長を続けていっていただきたいと願っています。 本校を卒業する一人一人が、これからも健康で実り多い人生を送ることを願ってやみません。

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